助成金業務は社労士の知識が生きる

どんな面で生きるのか?

私は前職も含め、1000社余りの労務管理を見てきました。つくづく思うんですが、労働基準法って守られています? 全然守られていなくないです? 社労士の勉強をしながらも、現場であまりにもないがしろにされているから、意味あるのかなー、なくないかなー、こんなの机上の空論だよなーと思っていました。

雇用保険とか社会保険関係は保険適用のルールブックなんで、実務で違う部分はあるにしろ、ざっくりとは役に立つかんじしたんですけどね。

スルーされがちな労働基準法

まーね、社労士のお仕事のひとつはトラブルの未然の防止なので、法律はこうなってるから、今の雇用契約や就業規則だといざ社員とトラブったときに大変ですよー。会社は不利ですよ。未然の対策が必要ですよ。というアプローチをするわけです。でも、人はなぜか自分は大丈夫、と思うもの。経営者が一番重視するのってお金ですから、節税とかは真っ先に頑張るけど、労務については法律を守る意識も低く、後回しにしがちだよね、そんな印象。

それでありがちな法律無視パターンをいくつか。

1.残業時間数に上限を設けている会社

残業は30時間まで、などと残業の上限を決めている会社があります。残業の上限を定め、その時間分までしか残業させないならば問題ないけど、実際は仕事量が多くて決められた時間内では仕事が終わらず、社員は終電がなくなるギリギリで帰宅。それでも支払われる残業時間数には上限があるため、はみ出た部分はすべてサービス残業です。

2.固定残業代を支払えば何時間でも残業させて良いと思っている会社

これもけっこう見かけます。本来、固定残業代は残業代の単価を元に何時間相当の残業代をいくらで毎月払いますよ、というものですよね。だから、固定残業代に含めた残業時間数を超えたら、当然超えた分の残業代は別途支払う必要があります。しかし何時間相当なのか明示していない、明示しているが超えても知らんぷりの会社は多いです。

3.出勤・退勤の管理をしていない会社

会社は勤怠管理をするという決まりがあります。でも実際には、タイムカードもなく、勤怠管理をまったくしていない会社があります。そしてそういう会社に限って、長時間労働が当たり前のブラック企業だったりするんですよねー。管理監督者では仕方ないかもしれませんが、一般社員には必須ですよね。(法律上、健康確保の観点から、管理監督者の勤怠管理も義務付けされています。)

4.常態的に法定労働時間を上回っている会社

会社に悪気はない会社も多そうなんですが。
法定労働時間は1日8時間、週40時間(もしくは週44時間)と決まっていますね。でも飲食店や整体院などの接客業の中には、お店の空いている時間イコール働く時間になっていて、オープンからクローズまで働くと、常に1日8時間をオーバーするケースがあります。本人と話はついていたとしても、変形労働時間制や固定残業代を設定していない状態で、基本給〇円としてマルっと支払っている場合、当然に、書面上残業代は支払われていないということになります。

5.最低賃金を下回っている会社

毎年10月にどんどん最低賃金が上がっていますね。最低賃金ギリギリの給与を設定している会社ではいつの間にか最低賃金が守れていないなんてことがあります。最低賃金が上がっていることを知らないのか、知っているが無視しているのかは知りえないですが。

また、残業代をきちんと支払わないケースとの合わせ技で、残業時間含めて時給換算したら最低賃金下回るということも。もちろん法律順守の観点でもあってはならないことですが、助成金的にも致命的なエラーになるので注意が必要です。

そんなスルーされがちな法律ですが、助成金業務を進めるうえでは大いに役立ちます!

助成金では労働基準法をスルーできない

というのも、助成金の申請の際には、必ず、労働条件通知書、出勤簿、賃金台帳、就業規則をセットで提出します。助成金は国が運営していますので、労働基準法をはじめとした法律の遵守は必須。書類間の整合性が取れていることも必須です。普段パーフェクトスルーしている法律に、向き合わなければならないのです。

一般の人は法律の知識がないので、就業規則って何? て感じです。労働条件通知書も作れません。残業代について会社と社員は話がついていても、その内容を適切に書面に表現する方法も知りません。そのため、労働基準法などの社労士の知識が大いに役立ちます。

顧問社労士に頼めばいいのでは?

顧問社労士が受けてくれればいいですが、嫌がる社労士は多いです。なぜなら、助成金は一般的に顧問社労士が請け負っている給与計算、保険関係の手続きなどとは畑違いすぎて、よくわからないのです。

顧問先一社手掛けるためにマニュアル読んで慣れない申請書類作って、なんてだるすぎますよね。確実に受給できるかもわからないし。助成金は労務の知識があれば良いだけでなく、特有の注意事項も多くあります。

例えば、社員の待遇改善になるような規定を「新たに」就業規則に規定することに対して支給される助成金の場合、「新たに」規定することが条件なので、もともと規定されていると支給対象とはなりません。そのあたりは基本ですが、ポイントとして意識していなければチェックしようもない。

場数を踏むことでポイントがわかってきますし、同じ助成金も何社も手掛けているうちに要領がつかめてくるものです。ですから、助成金専門の社労士には活躍の場があるんです。